転職者は、社会人経験がある分だけ、一般常識やビジネスマナーに習熟しているのが当然とみなされています。
その分、転職の面接でのチェックは厳しく、問題があれば減点評価されてしまうため、マナーに自信がある人が些細なことで不採用になる例もあります。
今回の記事では、転職の面接をより効果的なものにする面接の流れとマナーを詳しく解説します。
敬語はもちろん、面接会場での基本動作など細かなことにも、気をつけたいものです。基本的な知識を身につけて、転職を成功へと導きましょう。
転職の面接では勝手な自己PRをしても評価されない
中途採用の面接は、新卒時の就職面接のように、意欲や適性、将来の希望など”見込み”を問う質問よりも、これまでの業務の中身・技能レベル・努力の結果といった”事実や実績”を問う質問が中心になるのが一般的です。
また、職場になじめるか、労働条件は折り合うかも重要なテーマになります。たとえ実力者であったとしても、雇う側の条件に合わなければ採用できないからです。
求人企業が中途採用をおこなう理由や求めている人材像は千差万別です。採用の基準もそれぞれの業務内容や役割のほか、経営規模、在職者の人員構成など会社の諸事情が勘案され、ピンポイントになります。
ですから、同じ「入社後、何をしたいか」という質問でも、新卒者の就職面接で聞かれる場合とは狙いが違います。
応募企業のニーズに合わせた自己セールスが採用のカギ
面接は、そうしたマッチングの確認が目的となります。採用されるのは、あくまで求人企業のニーズに合う応募者です。
転職者の中には、面接を”自己アピール”の場と考えている人が多いですが、ニーズに合わない内容をいくら上手にアピールしたとしても、採用にはつながりにくいでしょう。
面接は、応募先のニーズに合う自分を売り込む”自己セールス”の場です。
また、注意したいのは、ライバルの存在です。たとえば、「経験3年以上、DTP知識、出版・広告・印刷関係業界の経験がある方」といった求人なら、それに合う応募者が集まり、どんぐりの背比べのような状況になりがちです。
求人広告の応募条件が詳細であればあるほど、似たようなレベルの応募者が集まって競争は激化する傾向にあります。
再確認しよう!面接の流れとマナー
会社勤めの経験のある人なら、面接の流れは心得ているでしょうが、基本マナーや動作についても、もう一度ポイントを押さえておきましょう。
①現地到着
早めに行くのが常識ですが、早すぎてもNGです。会場入口に5~10分前に入るようにしましょう。携帯の電源は必ず切っておきます。
- 面接予定時間の10分前には到着すること。
- 携帯電話の電源を切る。マナーモード設定やメール使用はNG。
- 身だしなみチェックは、現地到着前にすること。応募先企業のトイレであわてて直すなどはNG。
- コートなどの上着は、脱いで片手に持つ。傘などは受付に置くか、もしくは、畳んで携帯する。
②受付
名前を名乗り、面接を受けに来たことを伝えます。受付のない会社では、声をかけて対応してくれた人に名乗りましょう。
- 「○時に面接のお約束をいただいている○○と申します。人事部(担当)の○○様にお取次をお願いいたします」というように、訪問の趣旨や約束とともに名乗る。受付がない場合は、入口で「恐れ入りますが・・・」と声をかけ、応対に出てきた社員に伝える。
- 応対者が明らかに年下でも、謙虚な態度を示すこと。気安い態度や横柄な態度はNG。
③控え室
礼儀正しくし、廊下で人と出会ったら目礼します。控え室では、喫煙、飲食、読書、ほかの応募者との話は避けて待ちましょう。
- 出入り口の近くの下座に姿勢よく座り、呼ばれる(指示される)まで静かに順番を待つ。控え室での態度も面接官はチェックしているので、気を抜かないこと。
- 漫画や雑誌、趣味の書籍などを読むのはNG。読むのなら会社の資料などが無難。やはり、携帯の電源はオフのままに。
- 他の応募者と不必要なおしゃべりはしないこと。
- たとえ、控え室のテーブルなどに灰皿が置いてあったとしても、喫煙は我慢すること。
④入室
名前を呼ばれたら「はい」と返事して立ちます。ドアがあれば軽くノックして「失礼します」と声をかけながらドアを開け、入室します。
後ろ手でドアを閉めるのはマナー違反です。
- 名前を呼ばれたら返事をして入る。ドアがある場合は2~3回ノックして中からの返事を待ち、「失礼します」と声をかけて入室する。
- 開けたドアは向き直って静かに閉めること。後ろ手に閉めるのはNG。
⑤挨拶
ドアの前で挨拶をします。45度上半身を折る「お辞儀」をして名前を名乗ります。「面接のお時間をとっていただき、ありがとうございます」との言葉を添えましょう。
提出書類があれば、ここで渡します。
- 立ったまま背筋を伸ばして腰から30~45度の角度でお辞儀。「○○です。本日はお忙しいところ面接の時間をとっていただきありがとうございます。よろしくお願いします」と挨拶。
- 提出書類があればカバンから出し、「書類を持って参りました」と両手で手渡す。
⑥着席
面接官から促されてから着席します。椅子には背もたれとの間に隙間を作るようにしましょう。大きなバッグやカバンは足元の床に置きます。手はひざの上に揃えて置きます。
- ドアの前(出入り口)でお辞儀をし、席の左側に立ち「○○と申します。よろしくお願いいたします」と自己紹介し、再度一礼する(提出書類があれば両手を添えて出す)。面接官に「どうぞ」と勧められてから着席する。
- お辞儀は背筋を伸ばし、腰から30~45度の角度で行うとよい。着席するときは椅子の背もたれから少し体を離し、やや浅めに腰掛ける。背中を丸めたり、足を組んだりするのはNG。
⑦面接
面接中は、背筋を伸ばし、視線を相手の顔全体に向けます。意識して笑顔を作り、相手とのコミュニケーションを心がけましょう。
- 質問している面接官の顔に視線を向けて、聞いたり答えたりするのが基本。発言は語尾まではっきりと話すこと。
- 相手の目を見る強い視線は、意欲や熱意を話す際に効果的だが、度が過ぎると攻撃的な印象を与えるので注意が必要。適度に視線を外すこと。逆に、伏し目がちだったり、視線があちこち落ち着かなかったりする態度もNG。
⑧退出
面接が終わったら静かに立ち上がり、椅子の横でお礼の挨拶をします。出口で向き直って「失礼します」と言って一礼します。その後にドアを閉めます。
- 面接が終了したら椅子の左側に立ち、「ありがとうございました。よろしくお願いいたします」と深めにお辞儀をして出入り口に向かう。手前で面接官に向き直り、「失礼します」と会釈して退出。ドアがある場合は開けてから向き直り、そのままの姿勢でドアを閉めること。
- 面接終了後でも会場を出るまでは気を緩めない。社内や面接会場で伸びやあくびをしたり、携帯電話を使用したりしないこと。担当者に一礼して退出しよう。
その他の転職面接のマナー
基本マナーを抑えている人も、以下のような細かなマナーは見落としがちです。
ついうっかり忘れて面接に臨んでしまい、減点につながるのは避けたいところです。それぞれ詳しく解説するので、目を通して失敗のないよう気をつけましょう。
カバンに関するマナー
カバンに関するマナーについて紹介します。
- カバンの持ち方
- カバンの置き方
転職面接に際しては、事前に履歴書・職務経歴書を提出しており、特に持ち物がない場合もあります。しかし、手ぶらではラフ過ぎる印象を与えてしまうので、ビジネスシーンに合ったカバンを準備しましょう。
カバンの持ち方
面接会場に入室する際は、カバンを肩からはずし、ショルダーベルトは中にしまいましょう。入退室の際はお辞儀をするかと思いますが、男性の場合は手を太ももにつけたままお辞儀するので、カバンは片手持ちで体横につけるようにしてください。
女性は、カバンを前側太もも~膝にかけての間で両手に持ち、お辞儀をすると綺麗に見えます。
面接に持って行くカバンは、男性は手提げタイプのもの、女性は肩掛けタイプのものが基本です。普段はメインバッグとサブバッグに分けている方も、面接では荷物を1つにまとめましょう。荷物が多いとスペースを取ってしまううえ、入退室もしにくくなります。
どうしても荷物が多く1つにまとまらない場合は、駅のロッカーを利用するのも1つの手段です。また、派手な色・柄のものやリュックなどカジュアル過ぎる印象を与えるものも避けてください。
カバンの置き方
面接会場に入室する前に廊下や別室で待機する際は、座席の横に置きましょう。面接会場に入室したら、着席を促されるまでは自然に体の横に持っておくと綺麗に見えます。
着席を促されて着席したら、自分の椅子の横に立てて置きます。この際、椅子にもたれかからせるのではなく自立させましょう。そのため、カバンは自立するものを選び、着席の際には倒れないよう気をつけましょう。
横にもう一席椅子が置いてあっても、許可なくカバンを置くのはマナー違反なので注意してください。また、面接会場によっては、カバンを置くための台が用意されている場合もあります。
面接官に椅子や台にカバンを置くことを勧められたら、お礼を述べたうえで使用しましょう。
履歴書に関するマナー
履歴書に関するマナーは、次の通りです。
- 履歴書の書き方
- 履歴書の渡し方
履歴書には細かなマナーが多くあり、見落としがちなものもあります。知らず知らずのうちにマナー違反をしないよう、ここでしっかりチェックしておきましょう。
履歴書の書き方
まずは、履歴書の基本的な書き方についてです。履歴書のサイズはA4のものとB5のものが一般的ですが、A4サイズの履歴書は自己PRや志望動機を記入する欄が大きく、より詳細にアピールできるようになっているため、A4サイズがおすすめです。
履歴書を書く際は黒いボールペンを使用し、文字を書き換えることが可能な鉛筆や消えるボールペンは避けましょう。間違えた場合は修正液や修正テープは使わず、新しく書き直しましょう。修正すると、採用担当者から雑な印象を受けてしまいます。
学歴は中学校卒業から記載し、和暦と西暦の表記はどちらでもかまいませんが、履歴書内で統一してください。貼り付ける顔写真はサイズに注意し、3ヶ月以内のものを目安に使いましょう。
履歴書の渡し方
面接に履歴書を持参して手渡しする際は、履歴書をクリアファイルに挟んだうえで封筒に入れましょう。クリアファイルに入れることで、汚れや折れから履歴書を守れます。雨の場合は、さらにビニール袋に入れると良いでしょう。
手渡しの場合は、封筒に宛名を書く必要はありません。表面には左下に赤色のペンで「履歴書在中」と記載し、長方形で囲ってください。裏面には、左下に自身の郵便番号・住所・氏名を記載します。
履歴書を面接官に手渡す際は、上図のように履歴書を封筒から取り出し、面接官に見えるよう封筒と一緒に手渡します。封筒から取り出す理由は、面接官がすぐ読めるようにするためです。
その際、「本日はよろしくお願いいたします」など一言添えると良いでしょう。また、受付で履歴書を提出する場合は、封筒から出す必要はありません。
身だしなみに関するマナー
身だしなみに関するマナーは、以下の通りです。
- 服装は会社に合わせた格好をする
- ネイルやアクセサリーは派手すぎないようにする
人の第一印象は3秒で決まると言われており、また、視覚情報は与える印象においてもっとも重要な要素です。そのため、身だしなみでは絶対に失敗しないようにしてください。
服装は会社に合わせた格好をする
服装次第で第一印象が良くも悪くもなるので、まずはTPOをわきまえた服装ができているかチェックしてみてください。選考案内の際、指定がなければスーツが無難です。
私服が可能なら、オフィスカジュアルでも問題ありません。基本的なオフィスカジュアルは、男性なら次の通りです。
- ジャケット
- 襟付きのシャツ
- チノパンまたはスラックス
- 無地の靴下
- 革靴
- ビジネス用のバッグ
また、女性の場合は次のような服装が好ましいです。
- ジャケット
- シャツまたはカットソー
- 膝丈のスカートまたはロングパンツ
- ストッキング
- パンプス
- 派手過ぎないカバン
ネイルやアクセサリーは派手すぎないようにする
ネイルやアクセサリーは派手すぎないように注意しましょう。男性は、基本的に腕時計をする程度でアクセサリーをつける必要はありません。
女性もアクセサリーをつけない方が無難ですが、業界や業種によって異なります。一般的に、飲食業や接客業ではアクセサリーはあまり好まれません。しかし、ファッション・アパレル業界では、ポジティブな評価につながるケースもあります。
アクセサリーをするかどうか悩んだら、しない方が無難です。アクセサリーをつける場合は、シンプルで目立たないデザインのものを選びましょう。ブレスレットは避け、ピアスやイヤリングは揺れないものがおすすめです。
ネイルは基本的におすすめしませんが、爪の保護などで必要ならば、透明なものを選びましょう。
転職面接で好印象を与えるポイント
好印象を与えるポイントは、清潔感・健康的・理知的・誠実・活発の5つです。
周囲の人にチェックしてもらい、そのポイントから外れているようだと指摘されたら、普段の好みやこだわりを捨てて、面接用の自分を演出することをおすすめします。
なお、質疑応答中のオーバーアクションや、相手を指差したり腕時計をチラチラ見るのはNGです。キャリアに応じた落ち着いた態度が、好感を抱いてもらうための第一歩です。
転職面接マナーに関するよくある質問
ここからは、転職面接マナーに関するよくある質問に回答します。
細かな内容ですが、いざ直面して焦らないようにしっかり確認しておきましょう。
転職の面接は「さん」付けは問題ない?
面接で「さま」「さん」と付けて呼ぶのは、丁寧さが伝わるので問題ありません。ただし、役職者と面接する際、敬称に「さま」や「さん」をつけるのは「○○部長さま」となってしまい、日本語的におかしいのでNGです。
面接ではマスクを外しても良い?
外しても構いませんが、面接官に合わせるのが無難です。心配ならば、事前に企業に確認しておけば間違いありません。
お茶などを出されたらどう対応すればいい?
飲み物を出されたら、運んでもらった方にお礼の挨拶、または軽く会釈をして感謝しましょう。飲む際は、面接官に勧められてから喉を潤す程度に飲むのがおすすめです。勧められる前に口をつけたり、一気飲みするのは避けましょう。
転職面接に関するマナーまとめ
面接は、転職の成功を左右する大事な場面です。今回の記事を参考に、しっかりと面接の流れとマナーを押さえて、転職を成功させましょう。
とはいうものの、転職活動を、自分自身で全ておこなうことは、なかなか大変なことです。
特に、働きながら転職先を探す場合、時間がとれずに、面接の練習をすることや、履歴書・職務経歴書を丁寧に仕上げることが困難になってしまったり、志望先の会社についてのリサーチや、自分自身の希望の棚卸をする時間が取れません。
そんなときは、転職のプロである「転職エージェント」に相談することをおすすめします。