未経験職種への転職を希望する場合、「経験がないから」とあきらめるのはもったいないことでしょう。前職の経験から活かせることが何かあるはずですから、それを探してみることが大切です。
ただ、企業に対して、「未経験だからすべて教えてほしい」というスタンスでは、採用は難しいかもしれません。中途採用者は、原則として短期間で戦力となるように求められているのなら、未経験であっても、新卒者とは異なり、基本的なビジネスマナーを習得しているはずだからです。
そうした「未経験でもビジネス経験がある」というメリットを、採用担当者に伝えることが大切です。今回の記事では、未経験職種への転職を成功させるポイントを解説します。諦めずに、未経験職種への転職を成功させましょう。
1.未経験職種へ応募する際に必要なアピールとは?
未経験職職種へ応募する際、「前職は嫌だから」という消極的な理由では、採用は難しいかもしれません。「前職の経験があるからこそ、未経験の職種へ就きたい」といった前向きな理由の方が好ましいのです。
25歳くらいまでの応募者であれば、企業は、「未経験でも、技術や知識を習得できる」と考えます。しかし、30代以降の応募者となると、既存社員とのバランスや給与体系を考慮して、採用を躊躇する可能性も高いです。
その場合は、必要な知識や技術を自己啓発して覚えていき、新卒新入社員が5年かかることを、1年から2年で習得できる、くらいのアピールが必要となります。
また、「未経験者応募可」とうたっている求人広告があれば、なぜ未経験者でも応募できるのかを見極める必要があります。
応募者が集まらないから、未経験者まで枠を広げている可能性もあります。そのような企業に入社するなら、応募者が集まらない理由を納得したうえで、入社するべきでしょう。
2.現在の仕事と、新しく希望する仕事の共通点はないかを探す
実際に転職する際には、現在の仕事と重複するスキルが多ければ多いほど有利になることは間違いありません。ただし、希望する仕事と多少「距離」があったとしても、現在の仕事と希望する未経験の職種との「共通点」を探して、その点を強くアピールする努力をしましょう。
たとえば、営業職と経理職では、一般的に共通するスキルがみつけにくいのが現状です。しかし、視点を変えて努力することで、共通するスキルを身につけられる可能性もあります。
普段から、経理的な視点を持って営業職を続けることで、経理職に必要とされるセンスや適正・スキルが身につかないかどうかを考えてみましょう。興味を持って物事に当たっていく中で磨かれる「適正」というものもあるはずです。
また、本人自身「たいしたことがない」と思い込んでいるようなスキルが、未経験職種への思わぬ武器になる場合もあります。業界では当たり前とされているような知識や経験・人脈が、他の業界から見れば、「宝の山」に見えることは、よくあることです。
会社が異業種に進出したり、新しい事業を起こしたりする際には、その道に詳しい他業界の人材を求めることも多くあります。
3.応募する企業への絞込みが必要になることもある
具体的に転職活動を始める際に、応募する企業の絞込みが必要になることもあります。WEBデザイナーと書籍編集職とで、いくら「共通するスキル」が多いからといって、全く肌合いが異なる分野の版元へ、簡単に転職できると考えるのは、早計でしょう。
しかし、IT系の版元であればスムーズに転職できる場合もあるかもしれません。未経験職種への転職の際、共通する部分を探す必要があるというのは、スキルだけでなく、応募する企業も同じなのです。
近年、資格取得希望者の増加が著しいですが、未経験職種への転職に関する限り、資格に対する過剰な期待は禁物です。実務経験が伴わない資格ほど、役に立たないものもないからです。
会社は「利益に近いところ」ほど重要する組織です。資格そのものが利益を生み出すわけではなく、実務を通して得られた経験やノウハウ・人脈であればあるほどダイレクトに会社の利益に貢献します。
4.自分が目指したい道を、しっかりと考える
職種そのものの実務経験がなかったとしても、その職種に必要となる「本質のスキル」を身につけていることが、採用のポイントとなることもあります。
たとえば、総務職に必要な「本質のスキル」とは、「周りの社員と円滑にコミュニケーションができる」ことです。
会社によっては総務職の実務経験そのものがなかったとしても、「本質のスキル」を備えていることを評価して採用する場合もあるので、実務経験がなかったとしても、あきらめないようにしましょう。
翻訳書を中心とした版元の編集者が、日々の編集作業をこなす中で自然と翻訳スキルを身につけてしまって、そのまま翻訳職に転職してしまったというケースも存在します。
ただ、日々の業務を漫然とこなしているだけで、すぐさま「即戦力」と認めてくれるわけではないので、自主的にスクールに通うなどの努力は続けましょう。
また、自分が最終的に目指したい職業、身につけたいスキルはできるだけ早く確定させることも重要です。できるだけ早く「やりたい仕事」を確立することができれば、同一の職種の経験を豊富に積むことができるようになるからです。
ある特定の職種に極めて精通しているスペシャリストであれば、他の業界・職種でも引っ張りだこになれます。
5.未経験職種へ応募する際の職務経歴書の書き方
転職が前職のキャリアや経験を重視することを考えれば、未経験の職種に応募する場合も、前職で得た経験で「強み」になることを、職務経歴書でアピールする必要があります。
直接結びつかない経験であっても、応募職種で必要とされ、活かせることがきっとあるはずです。
応募者の中には、「経験がないから、すべて教えてください」「教育システムは、充実していますか?」などと言う人がいますが、自分で不足している部分は勉強していくくらいの意気込みがなければ、採用は厳しいでしょう。
職務経歴書では、最初に書く自己PR文300字程度の中で、「未経験の職種であっても、今までの経験を活かしチャレンジしたい」という気持ちをアピールすることが大事です。
6.未経験の職種へ転職する際の「志望動機」の書き方
応募者にとって、「キャリアがない」ことは、非常に大きなウィークポイントです。求人広告では、しばしば「未経験歓迎」という表示を見かけますが、即戦力になる経験者のほうが有利なことは言うまでもありません。
しかし、仕事上のキャリアがそのまま生かせないからといって諦めることはありません。希望する職種・業界に関連するスキルがないか、もう一度、洗い直してください。キャリアがない場合には、次のような点を明確にして自己アピールします。
- あえて未経験の職種を選んだ理由は何か
- その職種・業界で働いていけるという自信はあるか、またその根拠は何か
- どのようなスキルがあり、それをどのように活かそうとしているか
前職のキャリアが活かせることを具体的に示すと、説得力が増します。
NG例:3年間、営業管理部で営業スタッフのスケジュール管理や商品管理、伝票整理、パソコンを使った文書作成などを担当しました。
営業の経験はありませんが、持ち前のバイタリティで、お客様の信頼を得られるよう頑張ります。
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OK例:3年間、営業管理部で営業スタッフのスケジュール管理や商品の受発注業務管理などを担当していました。
営業の経験はありませんが、業務仕入管理や売上集計などの営業活動に伴う管理業務には、前職の経験が活かせると思います。身近で営業スタッフの活躍を見ており、私自身、営業の現場に飛び込んでみたいと思い、応募いたしました。
7.未経験の職種に転職する際に必ず聞かれる質問
未経験の職種に転職する際に必ず聞かれる質問は、「この仕事を選んだ理由は何ですか?」ということです。
- 「あえて未経験の職種を選んだ理由は何か」
- 「その職種で働いていける自信はあるのか」
- 「これまでの経験やスキルを、どのように活かすことができるのか」
そのことを、面接官は見抜こうとしています。キャリア不足は、転職希望者にとって最大のウィークポイントといってもよいでしょう。
しかし、書類審査を経て、面接までこぎつけたわけですから、会社は何らかの期待を抱いているはずです。
したがって、面接では積極的に新しい分野で挑戦する意欲を示すことが必要です。ただし、未経験の分野で活躍する自信を語るときには、その根拠も示さなくてはなりません。
そのためには、実務経験はなくても、すぐに関連スキルの習得に励んでいるといった具体的な説明も必要になってきます。
これまで、5年間にわたってシステムエンジニアとして経験を積んでまいりましたが、プロジェクトマネージャーとして、クライアントとの折衝が増えるにしたがい、コンサルタント・セールスの醍醐味に魅力を感じるようになりました。
営業の経験はありませんが、御社の○○事業における法人営業では、シスエムエンジニアとしての経験が十分、役立てられるのではないかと思っております。
8.未経験の職種に転職するための20のポイント
全くの未経験職種に転職しようと思うのであれば、大前提として、自主的な努力で実務スキルを身につけようとする姿勢が大切です。
中途採用は原則としてキャリア採用であるため、新卒採用時のように集合研修を受けさせたり、OJTを通して実務能力を鍛えてもらえるということはなく、入社の翌日から最前線の現場でバリバリと働けることが求められます。
「たとえ未経験であっても、入社してしまえば実務を通してスキルを身に付けることができる」という考え方をして、自主的な努力をおろそかにしたまま転職活動をしてしまうと、危険です。
万が一入社できたとしても、実務の壁に右往左往しているうちに、周りの社員から「使えないやつ」という評価を下され、実務経験を積むための「チャンス」すら与えられなくなってしまう危険性があります。
未経験の職種にチャレンジしようとしているのであれば、「やる気がある」ということは当たり前の話で、なんらアドバンテージにはなりません。口で言うだけにとどまらず、「やる気があります!」ということの「証拠」を持参することが望ましいのです。
たとえその「証拠」に不完全な部分があったとしても、そうした姿勢そのものが評価されて内定をもらえる可能性があります。
とにかく、未経験者は経験者よりも圧倒的に不利なことには変わりありません。
- なぜ未経験の職種に就きたいのかを整理する
- 前職からの逃避では通用しない(気持ちを切り替える)
- 業界や職種について情報収集を怠らない
- 新卒新入社員のように、手とり足とりは教えてもらえないことを肝に銘じる
- 年齢が高い場合、指導者が年下であることを理解する
- 年齢が高い場合、未経験の職種はハードルが高いことを理解する
- 適性がないと評価される可能性があることを理解する
- 受身の姿勢ではなく、自ら必要な知識や技術を習得する
- 未経験であっても、前職の経験で活かせることをアピールする
- 「未経験者応募可」とうたう企業は、なぜ未経験者を募集しているのかを分析する
- 学生時代に学んだことを含めて、適正をアピールする
- 短期間で戦力となることをアピールする
- 自主的な努力で実務スキルを身につけようとする姿勢が大切
- 口で言うだけにとどまらず、「やる気があります!」ということの「証拠」を持参する
- 現在の仕事と希望する未経験の職種との「共通点」を探して、その点を強くアピールする
- 本人自身が「たいしたことない」と思い込んでいるようなスキルが、未経験の職種へ転職する思わぬ武器になることもある
- 資格に対する過剰な期待は禁物
- 職種に必要となる「本質のスキル」を身につけていることが採用のカギとなることもある
- サラリーマンが日々の職務を遂行していくなかで、別の職種でも通用するようなスキルが自然と身についていることがある
- 自分が最終的に目指したい職業・身につけたいスキルは、できるだけ早く確定させることが重要
さいごに:未経験職種に挑戦しよう!
未経験職種への転職をすることを、最初は私もとても難しいことのように思っていました。経験がないから、未経験でも出来る仕事なんてないんじゃないか?という不安もあったのです。しかし、転職先の仕事内容がかならず経験者じゃないとダメとは限りません。
今の日本はどんどん若い働き手の人口が減っていることもあり、じつは仕事が溢れています。どこの職場も「人手不足」なところが多いので、未経験の職種でも採用をしてくれる企業がじつはたくさんあるのです。
転職をすることは確かにパワーがいることですが、今の辛い職場にそのまま勤め続けて何か自分に得になるのか、よく考えてみてください。未経験職種への転職は、熱意と意欲がカギになります。
現状維持でいることのほうが楽と思う場合もありますが、思い切って一歩踏み出すだけで、私のように生活が幸せな方向へと180度変わることもあるんです。
幸せになりたいならば、まずは自分が勇気を出して変わろうと努力しないといけませんよね。会社が人を選ぶのではなく、人が会社を選ぶのです。勇気をだして、転職活動に一歩踏み出してください。